【attention】
◆ハッピーサマー夢小説です。
◆当然のように年齢操作(高校2生生/付き合ってる設定)
◆前後編で後編は成人向け
◆後編は後ほどアップし、加筆修正を加えて合体させると思います



「精市って、勃起不全なのかな」
「…ごほっ、な」
「蓮二でも動揺することあるんだね」
「唐突が過ぎるだろう」
「ごめんごめん」
「急に何かと思えば…」
「じゃあさ、聞き方を変えるね。私って魅力ないのかな?」
「…それ、は」

 7月も半ば、放課後の教室はクーラーがよくきいている。暑さに突然むせ返ることも、飲食をしていないのに何かを喉に詰まらすこともない。なのに、柳蓮二はひどく大きくむせた。そして、普段から冷静沈着で質問をすると的確な答えが返ってくるはずなのに、今日の親友の返事はひどく歯切れが悪い。こんな柳蓮二はめったにお目にかかれないけれど、私が彼をそうさせてしまったのだ。いいのいいの、魅力がないって言いたいんでしょ、幼馴染とはいえ女性だからって気遣ってくれてるんでしょ。わかってるよありがとね、と出かけた声を遮るように、彼は一呼吸置いて、きっぱりと答えた。

「それは、俺が答えるべき質問ではないだろう」

(いやそれは正論、だけど…)

「…うっわぁ、逃げた」
「古典的だが逃げるが勝ち、だな。それに…」
「なに?」
「そういうことは本人に直接聞いてみるといい」
「うえっ」

 彼が視線をを向けた先には、私の彼氏が笑みを携えてひらひらと手を振っている。そう。何を隠そう私の彼氏は幸村精市である。部活がオフの日、美化委員会を終えた彼とは毎週一緒に帰ることになっている。彼を待っている間は帰宅部の私が時間を持て余すので、蓮二が勉強を見てくれたり、今日みたいに他愛もない話をして、時間つぶしに付き合ってくれているのだ。

「精市、委員会は終わったのか」
「あぁ待たせたね」
「いや、いつもより10分ほど早いだろう」
「珍しく早く終わったんだよ、も待たせてすまなかったね」
「…私は平気」
「そう、良かった」
「では、俺は失礼する」
「えっ蓮二もう帰るの…」

 蓮二は申し訳程度に机の上に広げられた参考書をそそくさと片付けていく。はじめは勉強見てもらおうと思ったんだけど、結局私が蓮二にだらだらと喋ってしまって進まなかったんだよね。それでも雑談に付き合ってくれたのだから優しい幼馴染なんだなあ…「今日は勉強、はかどった?」「…聞かなくてもわかるだろう、俺はとうにの成績は諦めている」「蓮二は優しいように見えて薄情だな」なんて会話が横で繰り広げられているのは聞かなかったことにする。

「そういえば精市」
「なんだい」
がお前に聞きたいことがあるそうだ」
「俺に?そう」
「あとでゆっくり聞いてやってくれ」
「…もう蓮二、そういうのいいから!」
「じゃあな」

 疾きこと風の如し。最後に落として欲しくない爆弾だけ落として、蓮二はあっという間に退散してしまった。残された精市は「なんだろう、気になるなぁ」なんて、首をかしげて穏やかに笑っている。

「それじゃあ、帰ろうか」
「うん」

 身支度を整えて立ち上がる前に、精市はそっと私の頭を撫でた。たったそれだけの触れ合いなのに私の身体は燃えるように熱くなってしまった。



 校門から出て15分ほどバスに揺られる。そこから歩いて10分の家に帰るまでのこの道も、すっかり精市と並んで歩くことに慣れてしまった。精市の家は逆方向で何度も遠慮したのに「週に一度の楽しみだから」と、彼は譲ってくれない。毎週律儀に必ず家まで送ってくれるものだから、本当に私は彼に大切にされているように思う。

バスから降りると精市は「いくよ」と手を差し出した。その手を取ると、綺麗な顔立ちの彼から想像もつかないような、少し血の滲むマメがあるごつごつとしたとした手のひらに包まれる。私はこの人のあたたかさが、強さの陰でのひたむきな努力が感じられるこの手のひらが「大好き」で、いつもぎゅっと握り返してしまう。

 優しくてあたたかな触れ合い、だけど、これだけじゃ足りない。
さっきの話題に対して、何をどう精市本人に伝えればいいのだろう。精市と付き合い始めて早半年。「あなたと早く先に進んでみたいです」なんて。身も蓋も無く、あけすけに言ってしまうと欲望丸出しで、私だけが彼を求めているうようで悲しい。半年前、テニスのW杯で代表選手として選抜され、やっと一段落ついた精市が告白してきてくれたことも、舞い上がって二つ返事で付き合いを始めたことも、割と付き合ってすぐに彼からキスしてくれたことも、…急いで可愛い下着を買ったことも。はるか遠い昔のことのようだ。

 どうしていつまでたっても私に手を出さないんだろう。それはそれは大切に扱われてきた自覚はある。こうやって手を繋いだり、たまに抱きしめられたり、人気のない道の影で不意にキスをしてきたり。もどかしい触れ合いに胸がぎゅっとなる。だけどそれ以上を望むのは、健全な高校生としてダメなことなのか。はしたないと思われやしないだろうか。
 テニスと恋愛の両立はさぞかし大変だろうとずっと遠慮していた。高みを目指す彼の横に居られるだけでも幸せだった。だけどそれだけじゃ足りなくなる自分が怖い。

「ふふっ、さっきからずっと困った顔してる」
「ええっ、ごめん」
「少し、そこに座って話そうか」
「うん」

 ベンチに腰掛けるとすぐに「ここで少し待ってて」と彼が言う。一緒にいられる時間が長くなることはとっても嬉しいけど、これから何をどう話せばいいのかは悩ましい。ああでもないこうでもないと頭を抱えていたところに、精市が飲み物を持って戻ってきた。

「ありがとう」
「なんか、炭酸が飲みたくてさ、これでよかった?」
「うん、サイダー大好き」
(こんな風に簡単に、精市にも気持ちをつたえられれば良いのに)

「ねぇ、を困らせてるのって、もしかすると俺?」
「ちが、う…うううん、えっと、ううん…」
「そういえば、俺に聞きたいことがあるんだったね」
 
 サイダーを一口飲んで、気持ちを落ち着かせたいのに、できない。すぐに確信をついてくるので、精市には嘘がつけない。誤魔化そうと思っても全て見透かされてしまいそうだ。もごつく私を彼はにこやかに見つめている。本当に、いま彼の隣にいられるだけで幸せなのに、どうしてそのままじゃダメなんだろう。きっと、多分、ううん絶対に、私は精市のことが好きだから彼をもっと知りたいし、もっと触れ合いたい、先に進みたいんだ。だから、勇気を出して、不器用かもしれないけど今私に出来る伝え方で、想いをつたえてみたい。

「夏休みは、」
「うん」
「夏休みは、予定開いてる日、ある?」
「もちろん、あるよ」

 精市の声は流れる波のようで心地がいい。ばくばく鳴リ続ける私の心臓を落ち着かせてくれるように、穏やかに返事をくれるこの人が、私は本当に大好き。だから、一人で悩んでいるだけじゃ何も始まらないから、ちゃんと伝えないと。

「夏休みに、二人で、思い出をつくりたい、です」

「いいね、どこかに行こうか」
「どこでもいい」
「どこでもいいのかい」
「だけど、ずっと一緒がいい」
「ふふ、俺も一緒にいれると嬉しいよ」

(そう。なら…)

「朝まで、とか、だめ?」

「えっ」


夏のチカラを借りて、勢いで伝えてみたものの、まともに精市の顔を見ることはできなかった。

( つづく )




@biwa.  サマバレリリースおめでとう!チョコ獲得ランキング14位おめでとう! ( 2018/8/14 )