手からラケットが落ちる。すとん、という音。
もう何度も。景色の変わる事のない白い部屋の中で、同じ事を何回だって繰り返すのだ。自分が何も出来ない事を肯定するのがそんなに怖い?そう、訊きたかった。訊けるわけなんて、無かった。がちゃん、からから。落ちるラケットの音は耳鳴りみたいに続いて止まない。耳鳴りじゃないことくらい、判ってるってば。
「拾うよ」
…もう耐えられなかったのかもしれない。こんな彼の姿を見るのは、例え彼を心から信じていたとしても辛い。救ってあげたいと思ったなんて言ったら嘘。止めさせたかっただけだ。
「駄目だよ。俺の為にならないだろ?」
そう言って、その細い手はまたラケットを拾うの。
思うよりあなたはずっと強い。だけど。
その姿は本当に…強くて何も出来ないひと。
弱い腕で
彼が掴む強さについて
( 衰えた筋力で握り続けるグリップには汗だけが滲む )
@biwa. 私はあなたを燃やす炎に向き合うこゝろが欲しいよ
東京事変「スーパースター」(2008)